読む・落語/betty館・・・ガマの油

がまの油

 
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さぁ、ご用とお急ぎでないかたはゆっくりと見ておいで・・





  六代目三遊亭円生





 
えぇ~  今・・この・・縁日というものがなくなりまして

            

 我々はなんか こう 淋しいような・・・・



 食べるものでは、えんどう豆、なんと言う・・・・



 あれを これ パチパチいりましてね・・・・・・・



 いりたてぇ~・・・・・・まめ・まめェ~・・・・・



 なんという・・・



 のどかでございまいた





        

 見世物というのは・・・大きい・縁日には必ず出来ます



 ろくろっ首だとか・・・



 あるいは・・・・・この・・いんがもの



 え~  へび娘・・・とり娘・・・かえる娘だという・・・



 いろんなものが・・・・・







 えェ~・・呼び込みというものは・・・



 大変・むずかしゅうございまして・・・・



 あれ・・の・・いかんによって・・



 客様が入るか・・入らないか・・・



 あんまり綺麗な声は・・・こう・・・いけませんで



 なるべくこう・・・しゃがれた押しつぶされたような声でね・・・・



 それでないと・・・見世物らしくないという







 さぁ・・ごらんなさい・・・



 これは只今評判の・・・・かえる娘だよ



 いわみの国はへいごうりひきかた村



 親は代々狩人で・・・



 親の因果が子に報い・・・



 生まれながらに・・・



 手ーての指が3本



 また、見ようと言って・・・またのお目にはかかれません



 どうぞ皆さん・・見てやっておください



 見るは、ホウラク・・・見られるは因果



 可愛そうなは、この子でござる・・・



 さぁ~へめちゃんやぁ~・・・お客さんがたに



 良く・・手~てをみておもらいよ・・・・



 ほーら生きてるよ・・・・・



 なんて言ってねェ~・・・



 こういう金馬がかぜひいたような声・・・



 なんか・・こう・・見世物の値打ちがないというには



 おかしゅうございますが・・・・・・・







 それから・・入場料が高く取れると言いましたのは 

              

 化け物屋敷なんていうのがありましてねェ



 ほら・その・地所もよけい使う関係もあありましたのしょうし



 いろんな物がこの中に・・・・



 それで・・木戸銭が大変高いんで・・



 それで  この・・どいう訳かアベックが入ったりする



 若い娘さんと・・・しきりにすすめて



 はいろうよ・・・



 いやいや・・



 見ようよ・・・



 いやいや・・・怖いもの



 こわかねえょー・・・



 なーぁに・・みんなこしらえものだからねェ・・・・



 入ってみようよ・・・話の種だから・・入ろうょ・・・



 なんて言ってね・・・



 え~・・・なけなしの高いかねを払って見たがる・・・



 これは・・・つまり・・・・



 おんなを怖がらせるというのが・・男の方の目的なんで



 え~・・入りますってェ~・・・と



 柳の木があって・・・・・



 その下にお化けが



 まぁ~・・たいてい・・・そんなものはこしらえもんでして・・・



 張子だなァと思っていると・・・



 中には本当の人間もいる訳でね・・・



 こいつは動かない・・だろうと思って・・・



 そばにいく・・・



 うぅ~・・・うぅ~・・・



 あっ・・・驚いたりなんかして・・・・・



 声を出したらもういけません・・



 それに・もうひとつ・・・客が入るのは・・・・



 もし・・これを見て驚かない方ならば



 入場料はお返しを・いたします・・・



 お返しをいたしますてェ~んで



 ただ見られるというんで・・入ってみようっていうんで・・・



 中には・・その・・大変強がりな方や・・なんかがいて



 ところが・・どっかで驚かされて・・声を出す



 まぁ~・・アベックなんぞは女の子が怖がるて~と



 もう・・えたり・・・てェんで・・・・



 男の腕にかじりついて・・・



 うわぁ~こわい・・



 大丈夫だよ・・・こわがか・・ないよ! 大丈夫だよ



 抱いたりなんかして

  

 そばに出ているおばけが・・・



 いやぁ~よせやぃ・・いい加減に離れろよ・・



 お化けがやきもちを焼いたりなんかして・・



 中には・・まァ・・・度胸のいい人がいて・・・・



 どうせ・・・こさえもんだから・・・・



 かわかねェ~・てェんで・・・



 ひとつ家があって・・



 あばら骨を出した痩せこけた・・・



 おばあさんが出てくる・・・・



 こんなもの・・こわかねェ~・・・なんて・・



 睨んだりだりしている・・・



 足の下に・・こう・・・蛇がいる・・



 とぐろをまいて・・・



 これは驚きます・・・



 おお~・・・てェんでねェ~・・・



 ええ~・・・これで失格なんです・・・







 ええ~・・・それでも・・まだ



 驚かない・・てェ~と・・・



 土橋があって・・これを渡るときに・・



 毛むくじゃらの手が・・・



 またぐらに・・入ってくる・・・



 こいつは・ふいですから・・・



 驚く・・・



 それでも・まだ・驚かないと・・・



 襟もとに・・冷たい水なんか・・・



 ポタ・ポタ・とたらされる・・・・・



 こいつも驚きです・・



 それでも・いけないとなったら・・



 あなた・・・



 暗いところに来るてェ~と・・



 後ろから・・張り倒したりして・・・



 こうなると・おばけじゃない・・・



 もう・暴力団だよ・・・



 暴力お化けってやつ・・・・



 まァ・・・それでも何でも・・・



 いったん・取った木戸銭は・・・・・



 絶対・・むこうはかえさないという・・・



 信念を持っています・・・





           つづく






がまの油2




 えェ~・・・やすい見世物には・・



 随分・・・いかがわしい物がありましてね・・・・・



 さァ・ごらんなさい・・・



 只今・・評判のこれは《ベな》である・・



 また見ようといって・・



 見られるものではない・・・



 さァ~・・・見ておいで・・・・《ベな》だ・・・





 なんだ・・・《ベな》 てェのは・・



 う~ん・・・おい・・けものかね・・・



 けものじゃ~ねェ~・・・けものじゃないよ・・



 なまえが・・《ベな》 てェんだ・・・



 なんか・・さかなの・・・へんな・・



 じゃァ・・・入ってみようか・・・・なんてェんで・・



 木戸銭を払って・・中に入る・・と・その・・



 なべが伏せてある・・



  ・・・・・・・・・・・・・・



 竹の棒を持った人が・・・



 これを・・時々叩くんですね・・



 カン・・・・べな・・・・・



 カン・・・・べな・・・・・



 なべが伏せてあるから・・べなだって・・・・・・





 さァー・・・・見ておいで・



 大ザルに・小ザルだ・・・



 さァ・・評判の大ザル・小ザルだよ・・・



 大きいザルと・・・小さいザル・・・



 なるほど・・・むこうは・・猿とは・・・



 けっしていわない・・



 大ザルに小ザルだってェ~いってんだ・・



 猿に間違えた方が悪いんだ・・





 さァ~・・・見ておいで・・・



 これは評判の大イタチ・・・・



 6尺もあるおおイタチだ・・



 さァ~・・・山からとれたばかり・・



 そばへは・・・寄らないで・・・



 怪我をするから・・・







 中に入りますってェ~と・・・・



 う~ん・・・板が一枚あるだけ・・



 どこにあるんだい・・・



 その・イタチ・・というのは・・・



そこに立てかけてある・・・



 え~~・・たてかけてある・?・・・・



 板じゃァ~ねェ~えか~・・



 これは・6尺ある・・



 6尺・ああ・・・



 まん中に血がついている・・



 う~ん・・血がついている・・



 6尺の大イタチ・だ・・・



 板に血がついている・・



 大イタチ・・

   

 だって山から捕れたばかりだって・・・



 こういう物は川ではとれない・・・



 そばに寄ると・・怪我をする・・・



 倒れると危ない・・



 これじゃァ・・・馬鹿にされているいるようなもので・・



 いやァ~・・それでも・なんでも・江戸っ子てェもんは・・



 変なものをみせやがんじゃァ・・ないか・・



 てんで・・笑って済まそうという・・・






 それから・こう・・・居合抜きだとか・・・



 がまの油を売る・・・



 あの・・仲間では・・殺陣師といいまして



 なかなか・・幅のきいたもんでして



 黒木綿の紋付に・・・



 まちだかの・・・袴をはきましてね・・・



 かたわらに・・こう薬が入りました箱・・



 干からびた・・がまがその前に5~6匹あって・・



 貝殻が・・・どっさり積み重ねってある・・



 こっちの方には・・刀が1本・・



 半紙・・なつめ・なんぞという



 備え付けがありましてね・・・







 さぁ、



 ご用とお急ぎでないかたはゆっくりとお聞きなさい・・


 遠目山越し笠のうち・・



 ものの文色(あいろ)と理方(りかた)がわからぬ・・


 山寺の鐘は轟轟(こうこう)として鳴るといえども



 童児一人(いちにん)来たり、鐘に撞木(しゅもく)を当て


 ざれば、鐘が鳴るやら・・



 撞木(しゅもく)がなるやら・・



 とんとその音色がわからぬが道理・・






               

 だがしかしお立合・・・



 手前持ちいだしたる棗(なつめ)の中には



 一寸八分唐子(からこ)ぜんまいの人形・・



 人形の細工人あまたあるといえど



 京都ゥにては守随(しずい)



 大阪表においては竹田縫之助(ぬいのすけ)



 近江の大じょう藤原の朝臣(あそん)・・



 手前持ちいだしたるは近江がつもり細工



 咽喉(のんど)ゥには八枚の歯車を仕掛け



 背中には十二枚のこはぜを仕掛け



 大道へ棗(なつめ)を据え置くときは



 天の光と地の湿りを受け



 陰陽合体いたしたるとき、



棗(なつめ)のふたをぱっと取る



 つかつか進むが虎の小走り虎走り



 雀の小間取り(こまどり)小間返し



 孔雀霊鳥の舞、人形の芸当は十二とおりある


 だが、しかしお立合、ほうり銭や投げ銭はおよしなさい


 手前大道に未熟な渡世をいたすといえど



 はばかりながら 天下の町人



 ほうり銭、投げ銭は貰わぬ



 しからば何を稼業にいたすというに・・



               



 手前持ちいだしたるは、



 これにある、蟇蝉噪(ひきせんそう)四六のがまの油だ・・



 そういうがまは、おれの家の縁の下や流しの下にもいると



 云った御仁がいるが、



 それはおたま蛙、蟇蛙(ひきがえる)といって・・・



 薬力と効能のたしにはならん・・


 手前持ちいだしたるは四六のがま



 四六、五六はどこでわかる



 前足の指が四本、あと足の指が六本、



 これを名づけて四六のがま



 このがまが棲めるところは



 これよりはるゥ..か北にあたる



 筑波山のふもとにおいて、車前(おんばこ)



 という露草(つゆくさ)を食らう



 このがまの捕るには、五月に八月に十月



 これを名づけて五八十(ごはっそう)は



 四六のがまの油だ・・、お立合・・



 このがまの油をとるには



 四方に鏡を立て下に金網を敷き



 その中にがまを追い込む


 がまはおのれの姿が鏡に写るので



 おのれの姿を見て、おのれと驚き・・



 たらァ..り、たらりと油汗を流す


 これを下の金網にて漉(す)き取り・・



 柳の小枝をもって三七二十一日の間



 とろォ..りとろりと


 煮詰めたるがこのがまの油



 赤いは辰砂椰子(しんしゃやしう)の油



 てれめんてえかに・まんてえか



 金創には切り傷・効能は出痔いぼ痔はしり痔



 横根雁瘡(よこねがんがさ)


 そのほか腫れ物いっさいに、もちいて効く・・


 あァ~ いつもは一貝で百文であるが・・



 今日はひろめのため・小貝を添え・・



 二貝で百文だ。

 ...まッいや、ちょっとお待ち・・



 がまの油の効用はそればかりかというに・・まだある


 切れ物の切れ味を止めるというのは、神の如し・・



 手前持ちいだしたるは鈍刀たりといえど・・



 先が斬れて元が斬れぬ


 なかばが斬れぬというのではない・・



 ごらんのとおり、抜けば玉散る氷の刃(やいば)


 お目の前にて白紙一枚を切ってお目にかける



 さ、一枚の紙が二枚になる、二枚が四枚


 四枚が八枚、八枚が十六枚、十六枚が三十二枚になり



 春は三月落花の形、比良(ひら)の


 暮雪(ぼせつ)は、ふゥ..雪降りの形だ



               


 かほどに切れる業物でも・



 差裏差表(さしうらさしおもて)へ



 がまの油を塗るときは白紙一枚


 容易に切れぬ・・



 さ、このとおり、



 切れ味がピタリと止まる



 白紙一枚容易に切れぬ



 さァ・・・この通り



 たたいて切れぬ



 たたいて切れぬ、引いても切れぬ


 拭き取るときはどうかというに



 後ろの御仁のように



 面の皮が千枚張りで厚いから



 切れぬのであろう・・・などと



 口の悪い御仁がある



 さァ・・・腕をためして、ご覧にいれよう・・・



               



 鉄の一寸板も真ッ二つ



 さァ、ちょっと、さわったばかりでこのくらい切れる


 こんな傷はなんの造作もない・・



 がまの油をひとつけ付けるときは痛みが去って


 血がぴたりと止まる。なんとお立合






    つづく





まだまだおもしろい!!

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by kimagurebetty | 2001-07-21 16:04 | 文化 | Comments(0)

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